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「最近の若者は…」と嘆く美容室オーナーが知っておくべき大切なこと

公開日
writer:Mariko Matsumoto

「自分が店を出すなら、スタッフがのびのびとやりたいことを追究できるようにしたい」。そう思って出店の夢を果たし、風通しの良い雰囲気を作るよう努力してきたが、いまいちスタッフに熱意を感じられない…。自分の若い頃はあんなに頑張っていたのに、夢や目標を自ら掲げて努力しようという姿勢が見えない。
「何かが違う…」そう思っているうちに、1人、2人と新人スタッフが辞めてしまった…。

こんな悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?今回はスタッフさんの教育、中でも「自主性」について、日頃の取材の中から感じたことを書いていこうと思います。

新人美容師にとってはビジョンを描きにくい時代

もし、うちの新人美容師に高い向上心と「自分はこういう美容師になる!」という熱い意志があれば、教育方針で悩むことはないのに…と思われるかもしれません。
しかし、本当に個々の意志のみで何とかなるものでしょうか?

ご存知のように美容室の数は年々増加しており、競争は激しくなっています。(平成27年度は前年度+2,774件でした)現在出店している年齢層の方が美容師を目指した2000年前後には、ハントの必要がないほどお客様が詰め掛けたり、TV番組へのレギュラー出演や雑誌連載を持つ美容師がいたり、身近でも店舗拡張や新規出店の話が多数入ってくるような、誰もが成功を夢見られる状況でした。

ところが、カリスマブームも終焉を迎え、追い打ちをかけるように1000円カットのブームが沸き起こり、美容業界の置かれている状況は一変しました。かつてあれほど大きい成功を収めた店舗も縮小を余儀なくされるなど、大変厳しい局面を迎えています。わかりやすい成功モデルがない混沌とした状況では、「こんな風になりたい」という理想は持ちにくいものです。

まずは、今の時代に美容師を志しているということと、10年前、20年前に志しているというのでは大きく状況が違うという理解が必要です。いくら熱い意志があっても心が折れてしまうのには、本人の弱さもあるかもしれませんが、世相や業界の流れによるところも大きいのです。

このように、今の若い美容師達が置かれた状況を前提とした上で教育方針を設定することが重要です。

「自主性」に頼らず、システムを作ろう

お店を出すまでに大きく成長されたサロンオーナーの方々の原動力には、やはり熱気あふれる時代であったことも要因の一つとしてあったかと思います。基礎、接客、全体を見る力、マネジメント力…これらは「頑張れば自分にもできる」「夢は叶う」「あいつには負けたくない」とひたむきに頑張れる背景があったからこそ身に付いたのかもしれません。

しかし、その分深夜にまで及ぶ残業や厳しい指導など、肉体的・精神的にギリギリの状態を乗り切ってきた方も多数いらっしゃいます。修業時代の辛い部分を下の世代に味わわせたくないために「成長の方向性やスピードはスタッフの"自主性"に任せています」といったことも取材の中でお聞きすることがたびたびあります。
ただ、右も左もわからない新人美容師には、「こう成長していきたいから、まずはこれをやって、次はここを伸ばして…」という計画は立てられません。

サロンオーナーの中には、現代という時代においてスタッフの実力を育むのは「良いシステム」だと考え、実践していらっしゃる方がいらっしゃいます。

オーナーをいずれ超えていくような力のある美容師を育てるなら、「イヤな想いはさせたくないからやりたいようにさせよう」ではなく、お店の側から「こんな風になりたいと思わない?」「こんな働き方ってイイよね」と具体的な人事考課制度を通じて、はっきりと道のりを示してあげることが必要です。

システム化と没個性化はイコールではない

とはいえ、「こんな美容師を育てよう」と理想像を固定してしまうと、本人の個性を潰してしまうのではないか?お店が偏ってしまうのではないか?と考える方もいると思います。

がちがちになってしまうことが怖い場合は、「これだけは外せない」という技術や価値観を中心に据えてみてはいかがでしょうか?「長く続けてほしい」「クリエイティブであってほしい」「お客様と信頼関係を築いてほしい」…。それぞれを実現させるために、どんなシステムが必要なのか、逆算して考えることもできると思います。

大切なのは、決められたシステムの中でもしっかり自由と責任をスタッフに与えることです。制約の中で生み出された意見や自主的な行動をないがしろにしなければ、個性がなくなってしまうということはありません。

そもそも、個性というのは基礎という土台がしっかりあってようやく表現されていくものです。抽象表現で名を知られるピカソが若い頃は写実的なデッサンばかり描いていたように、絵画・音楽・スポーツなど、どの分野でも一部の天才を除いては皆その技術の基礎をしっかりと身に付けています。
スタッフの自己実現を焦らず、まずはお店のやり方や大切にしている考え方をルール化し、徹底的に基礎を教え込む。そしてそれが満足にできるようになれば、その後自然と個性が出てくるのではないでしょうか。

次の項目ではシステム化の実例を取り上げます。有名店や大手チェーンのようなことはウチには無理…と思われる個人店の方もいらっしゃるかもしれませんが、規模は大きくなくても良いシステムを導入して成功しているお店の話をご紹介します。

活気ある風土を作り出したシステム化の例

ある美容室では年に1度の合宿で年間目標を立て、全員の前で発表をしています。そして、その実現のために毎月の行動目標を逆算して設定し、上司と毎月面談を続けながら成長へのステップを踏んでいます。
この店舗では長年に渡って働き続けられるよう、幹部昇格や産後復帰を果たした、新人のロールモデルになるような先輩美容師たちがいるのが特徴です。中には子育てをしながら有名コンテストへの入賞や月売上600万円という驚異の数字を弾き出した女性美容師も在籍しており、サロン全体に「ああなりたい」「成長したい」という活気があふれています。

これらのシステムをとってみると、お店側はスタッフに対して「長く働いてほしい」「美容を通して自分の夢を叶えてほしい」と願っていることがわかります。
定例のイベントや理想のモデルになる美容師を作ることで、新人スタッフのモチベーションに火をつけ、その願いを実現させています。

思いやりの風土を作り出したシステム化の例

また別の美容室では、結婚・出産による女性スタッフの離職を減らすため、「1年半でのスタイリストデビュー」を実践しています。早いうちからお客様を掴んでおけば、復帰できる可能性が大幅に上昇するからです。営業時間中の空き時間を使っての練習などタイミングを工夫することで、深夜まで残ることなく早期デビューを成功させています。
こちらのオーナーは、「会社がスタッフの味方である」ということをいかに制度として実証するかが重要だと語っています。スタッフ同士非常に仲が良く、自然とフォローし合うチームワークが確立されているのも印象的なあたたかい美容室です。

会社がスタッフの一番の味方であれば、スタッフが離職したり強い不満を持つという確率は低くなるでしょう。こちらではそれを見事に実践し、早期デビューさせることで美容師としてのキャリアを長持ちさせ、離職を先回りして防いでいます。

おわりに

2つの例も交えて解説してきましたが、良いシステムを導入すればより良いサロン運営が可能になります。実際、今回紹介した実在するサロンはSALONAGスタッフの目から見ても非常にうまくいっています。
「辞められたら困るから」「どうせ辞めてしまうから」とスタッフ教育に本気になることを避けたり、その結果「今の若い子は…」と嘆くことほどもったいないことはありません!
良いシステムを作れば、今伸び悩んでいるスタッフの方の成長にも繋がるかもしれません。
お店の方針を見直すのは簡単なことではありませんが、やってみる価値は大いにあります。「うちに来てくれて良かった」「この店に入ってよかった」、そんな風に想い合えるお店になることを願っています!


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